能の「紅葉狩」をもとに創作された歌舞伎舞踊。
平成6(1994)年に三代目猿之助(現・猿翁)が、
舞踊作家の萩原雪夫と共に、新たな工夫を加えて作られた作品です。
2010年に発表された「三代猿之助四十八撰」の一つにも数えられます。
猿之助四十八撰
三代猿之助には、「猿翁十種」(昭和39年制定)「澤瀉十種」(昭和50年制定)
「猿之助十八番」(昭和63年制定)などがありますが、
「猿之助四十八撰」は、2010年に制定された、
「復活通し狂言十八番」「猿之助新演出十集」「華果十曲」
「新作・スーパー歌舞伎十番」からなる計48作品を指します。
「鬼揃紅葉狩」は、猿之助四十八撰のうち「華果十曲」のうちの一つです。
鬼揃紅葉狩
松羽目物
お能をご覧になった事は、あるでしょうか?
能舞台の奥には、老松を描いた鏡板があります。
お能の場合は、この老松が、どんな演目であっても変わる事はありません。
この能舞台を模して作られたのが、歌舞伎の松羽目で、
舞台背景に、巨大な松、左右の袖には竹が描かれ、
下手(舞台左側)には五色の揚幕(あげまく)、
上手(舞台右側)には「臆病口」という小さな引き戸があります。
能や狂言をもとにして作られた舞踊に使われ、この松羽目が使われる作品を、
松羽目物といいます。
「鬼揃紅葉狩」の場合は、松の他に色鮮やかな紅葉が描かれています。
そのような舞台を、松羽目物とは限定せず、
題材を能や狂言から取った、能取物と呼びます。
あらすじ
美しい姫が秘めるその本性は…
秋も盛り、紅葉が目に鮮やかな信濃国・戸隠山中。
ここへやってきたのは、従者を従えた余吾将軍・平維茂。
紅葉を堪能し、館へ戻ろうとするところへ侍女を従えた美しい、更科の前が現れ、
維茂主従を呼び止めて酒宴を開き、共に紅葉を愛でようと勧める。
維茂は、更科の前たちに勧められるまま盃を傾け、やがて更科の前は艶やかに舞を舞い始める。
酒に酔い、うたた寝を始めた維茂たちが、ぐっすり眠ったのを確かめると、
更科たちは様相を一変し、怪しさを増して姿を消して行くのだった。
実は更科の前たちは戸隠山に棲む鬼女で、維茂たちを喰らわんとしていたのである。
歌舞伎美人 公演情報 みどころ
長野県の戸隠周辺に残る、「鬼女紅葉伝説」が元になっていて、
勅命を受けた平維茂が、八幡大菩薩より授かった破邪の刀でを退治した
というお話。
戸隠山には鬼の伝説が数多くあり、室町時代後期に、
観世信光により、お能の謡曲『紅葉狩』が作られ、鬼女伝説が定着した、
とされています。
題名にある鬼揃いとは、何人もの鬼が出てくることを指します。
鬼が揃って、演舞を舞う様は壮観で、大迫力に胸が躍ります。
ちなみに、あらすじにある、余吾将軍・平維茂とは、
維茂が、平貞盛の15番目の子だったことから、
余吾(十を超えた余りの五)という意味の、通称だそうです。
特徴
歌舞伎音楽には、「竹本」「常磐津」「清元」そして「長唄」があり、
一つの曲を、異なる種目が交互に掛け合う「掛合」という演奏形態がありますが、
この演目は、竹本・常磐津・長唄の、三種が掛け合う「三方掛合」が見所です。
また、美しい夢のような、紅葉狩りの場面から一転、
鬼女に変身した鬼たちが、毛ぶりをしながら、まさに髪を振り乱して踊る群舞、
維茂と更科の前が、所作板を豪快に踏み鳴らしながらの踊りは、
「三方掛合」と相まって、迫力満点です。
前半の美しさと、後半の荒々しさ!
まるで二つの舞台を見たかのような、満足感のある作品です。
舞踊の中でも、非常にわかりやすい作品ですので、ぜひ一度ご覧いただきたいです。
鬼揃紅葉狩
能の「紅葉狩」をもとに創作された歌舞伎舞踊。
平成6(1994)年に三代目猿之助(現・猿翁)が、
舞踊作家の萩原雪夫と共に、新たな工夫を加えて作られた作品です。
2010年に発表された「三代猿之助四十八撰」の一つにも数えられます。
目次
猿之助四十八撰
三代猿之助には、「猿翁十種」(昭和39年制定)「澤瀉十種」(昭和50年制定)
「猿之助十八番」(昭和63年制定)などがありますが、
「猿之助四十八撰」は、2010年に制定された、
「復活通し狂言十八番」「猿之助新演出十集」「華果十曲」
「新作・スーパー歌舞伎十番」からなる計48作品を指します。
「鬼揃紅葉狩」は、猿之助四十八撰のうち「華果十曲」のうちの一つです。
鬼揃紅葉狩
松羽目物
お能をご覧になった事は、あるでしょうか?
能舞台の奥には、老松を描いた鏡板があります。
お能の場合は、この老松が、どんな演目であっても変わる事はありません。
この能舞台を模して作られたのが、歌舞伎の松羽目で、
舞台背景に、巨大な松、左右の袖には竹が描かれ、
下手(舞台左側)には五色の揚幕(あげまく)、
上手(舞台右側)には「臆病口」という小さな引き戸があります。
能や狂言をもとにして作られた舞踊に使われ、この松羽目が使われる作品を、
松羽目物といいます。
「鬼揃紅葉狩」の場合は、松の他に色鮮やかな紅葉が描かれています。
そのような舞台を、松羽目物とは限定せず、
題材を能や狂言から取った、能取物と呼びます。
あらすじ
長野県の戸隠周辺に残る、「鬼女紅葉伝説」が元になっていて、
勅命を受けた平維茂が、八幡大菩薩より授かった破邪の刀でを退治した
というお話。
戸隠山には鬼の伝説が数多くあり、室町時代後期に、
観世信光により、お能の謡曲『紅葉狩』が作られ、鬼女伝説が定着した、
とされています。
題名にある鬼揃いとは、何人もの鬼が出てくることを指します。
鬼が揃って、演舞を舞う様は壮観で、大迫力に胸が躍ります。
ちなみに、あらすじにある、余吾将軍・平維茂とは、
維茂が、平貞盛の15番目の子だったことから、
余吾(十を超えた余りの五)という意味の、通称だそうです。
特徴
歌舞伎音楽には、「竹本」「常磐津」「清元」そして「長唄」があり、
一つの曲を、異なる種目が交互に掛け合う「掛合」という演奏形態がありますが、
この演目は、竹本・常磐津・長唄の、三種が掛け合う「三方掛合」が見所です。
また、美しい夢のような、紅葉狩りの場面から一転、
鬼女に変身した鬼たちが、毛ぶりをしながら、まさに髪を振り乱して踊る群舞、
維茂と更科の前が、所作板を豪快に踏み鳴らしながらの踊りは、
「三方掛合」と相まって、迫力満点です。
前半の美しさと、後半の荒々しさ!
まるで二つの舞台を見たかのような、満足感のある作品です。
舞踊の中でも、非常にわかりやすい作品ですので、ぜひ一度ご覧いただきたいです。
松羽目物,演目解説
Posted by yumiko